ある日、いつものように行きつけのスタミナ酒場で飲んでると、ちょいと器の話になったりした。やっぱし酒飲みを語るには、器は欠かせまいと。アル中系や、ただ飲めればいいという学生の酒飲みなんかと一線を画すのは、シチュエーションや肴や器へのこだわりではないかと。それが大人の酒飲みってもんでしょ。的展開だったと思うが。
 そんな話の中、スタミナのお母さんに江田駅(東急田園都市線)から5分ばっかし歩いたとこに、何だかこじゃれたいいとこがあるわよ。などと言われ、早速翌日行ってみる。
  一応、 言われた通りに江田の駅で降りてみるが、果たしてどっちに行ったらいいものやらちっとも分からない。駅周辺を見渡してみると、ちいさいながら確かに“有田陶芸倶楽部”の文字と“こちら”の矢印があるんで、そっちの方向に歩いてみることにする。

 ひょっとして、岡星が結構鈍いだけで、分かる人は結構あっさりと行けるかも知れない。あまりにそれらしくもない建物に気づかないだけなので、安心して歩いてれば左手に見えるはず。
 ところが、結構な坂道が目の前に拡がるその視界の中にはそれらしきものが見当たらない。
 と、あれ?左にあるでっかいコンベンションセンターのような建物がひょっとしてそうではないのと気づく。はっきり言ってこの建物はわからない。モダンすぎる。
 しかも、看板らしい看板もなく、入り口のうえに“有田陶芸倶楽部”と書かれてるだけ。こりゃ、初めて来た人間はわかんないよ。
 でも、道や何かは結構一本道ちやあそうなんで、一回行ってる人なら絶対大丈夫なはず。って程度だけどね。
 また、入り口脇の看板がなかなかわかりづらく、中に入ってる陶芸屋さんとか、喫茶とかレストランなんかの看板が個別にになっていて、まさに新橋辺りの雑居ビルの看板ってかんじなのだ。これらの集合体が有田陶芸倶楽部なのねと気づくのにも少々時間を要する。
 と言っても気になるほどではないと思うんで、アクセスはまあ、いいほうかと・・・・。
まずは、食房“器楽”へと行ってみる。入り口入って、教育行き届いた感じの店員さんにお食事ですかと訊ねられ席に案内される。ほえーすごい数のカップ類だなあ・・・。などと感心しつつ着席。
 そしてまず、度肝を抜かれる一言が、「店内にございますコーヒーカップの中からお好きなものをお選びください。」え?鎌倉辺りとか、自由が丘辺りの喫茶店にたまにあるが、どう見ても規模が違うぞこりゃ・・・。いくつの中から選ぶのか訊ねると、「3000種です。」と爽やかな答え。え?毎日違うカップでコーヒー飲んでも10年かかっちゃうじゃないか!ぶひー!さすが陶芸倶楽部!
 まずは一服、タバコでも吸おうと灰皿をさがす。む?ひょっとしてこれが灰皿ですか?
 ふたを開けてみる。やはり灰皿のようだ・・・。そうか。食事の前にタバコを吸ったりした場合、吸殻が気になったりあるいは、食べながら話に夢中になってて、灰が飛んじゃったりするもんな。
 一応、勝手に配慮を察してみたりする。
 で、とりあえずのビールなんて頼むと、先にお持ちしますか?と小気味良い答え。そう、そういう配慮が大切なんだよな。食事と一緒の方がいい人もいるだろうし、先に一杯ってひともいるだろう。ラーメン屋で、先にビールが出て、ラーメン来ちゃってから餃子が来たりすると、ちょっとむかつくもんな。
 で、案の定それぞれ違う器でやってくる。しかも陶器。
 ふうむ。意外に想定外のところで感心させられるよな。店員の接客マナーも行き届いてるし。
 特に最近、味かサービスか、アトラクションかみたいな感じが多いような気がする中、結構大切なことかも知れない。岡星もまだまだ勉強ですな。
 頃合いを見て、お食事はどうなさいますか?ときたのでコースにしておく。とは言ってもランチコースなので非常にリーズナブルだ。
 しばらく待って、食事が運ばれて来て、これまた驚く。げ!ひとつひとつ器が違う!しかも、うちの奥さんも同じものを頼んだのだが、二人のお盆の上に同じ器がないのだ!テーブル上に28種類の器。しかも、ビールとコーヒーを考えると、32種類の器が乗ってることになる。
 くだらない事だけど、洗うの面倒そう!とか考えてしまう。
 しかし、ここで店の名前が“器楽”だということを実感したのである。そうか。そういうことか。毎回同じものを食べたとしても、来る度に器を楽しめるということか。んー。まさに、有田陶芸倶楽部とはよく言ったものだな・・・。
 ちなみに、ここで供される器は全て陶芸倶楽部の中のお店で購入可能。
 食器は使って何ぼなのだから、実際の使用状況をお客様に見せることはすごくいいことだと思う。
 そのあと、店内で、あ!これあったあった!とか来てるお客さんはみんなやってたもん。
 さらに、今回はランチだったが、夜は日本酒をいろんな器で楽しめるらしい。酒器が何種類あるのかは、恐ろしくて聞いてないので、今後無理にでも機会を作って、取材せねばと思う。
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