決してブランド志向などではないとかいいつつ、どーも日本酒にいたるまでブランド傾向が強まってる気がする昨今。ほかの酒ならともかく日本酒においてブランド志向はいかんだろ。ウイスキーやワインなんてのは、どうしたって熟成が必要だし何年にもわたっての努力が必須な世界。ある程度はブランドの威力も認める。ってより全然一朝一夕では行かない世界。ま、だからと言って日本酒が簡単ではないことは百も承知だが、熟成させる必要もそうそうあるわけではない。つまり、今年は美味いぞ!って年もあるだろうし杜氏の努力が反映されやすいように思う。
 ま、簡単に言えば身近な蔵元を見直してはいかが?ってわけさ。 何たってこの東京にさえちゃんと頑張ってる蔵元はいるんだから・・・。
 今回は、東京福生市にある。石川酒造に出かけた。福生といっても、米軍基地ぐらいしかピンとこないって人もいると思うけど、ずばり横田基地のすぐそばなんだよな。ただ、行ってみると非常にわかりづらい。ろくに看板も出てないし(一応幾つかはあったけどね、車じゃわからんね。)ま、だからこそ人がうじゃうじゃって事態も避けられる。ある意味穴場的な要素もありありなのだ。
 わかりづらい道(路地)をカクカクと曲がって到着するとまず驚くのが“工場”なんだけど“工場”の敷地じゃないのだ。個人宅の敷地内に蔵や工場や、いけてる店があるのだ。その敷地加減!環境!どれをとっても恐るべし石川さんなのだ。



 恐らくはかなりの年齢を経ていると思われる二本の木をはじめとして、敷地内には歴史を感じさせる様々な建物、道具、そして住居や販売所、和洋様々な飲食店がある。
 この木は、それぞれ米の神である大黒様と水の神である弁天様を奉ったものであるらしい。この二本の木を見るだけでも、いかに古くからこの地で酒造りに携わってきたかが伺えるエピソードである。
 しかも、和・洋それぞれの店で、日本酒やビールのそれぞれに合わせた料理が用意されているので、多満自慢をはじめとする酒と季節の料理を大変お得な価格で楽しむことが出来る。



 呑んでみるとわかるけど、多満自慢の特に純米系と吟醸系は非常に味が濃い。それに負けない和の美味いものを食べさせてくれるのがこの店。そば処とあるけれどもうどんもかなりのレベルだ。
 この日のおすすめは、刺身が黒鯛。オリジナルの厚揚げ。野菜の天ぷらとどれも比較的癖があったり、割りに味が濃い目のものだったりする。黒鯛は磯の香りがかなり強く、野菜も恐らく地のものであろう、あくの強さがある野菜らしい野菜だった。
 単に、切れがいいだけの日本酒では恐らく負けてしまうであろうメニューなのだが、多満自慢は全くそれらに負けず、見事に調和する個性を持っていた。